[主催]
新社会システム総合研究所(SSK)
[重点講義内容]
地球温暖化による気候変動が、人類の生活に甚大な影響をおよぼし脅威を増す中、2016年にパリ協定が発効されたにもかかわらず、CO2排出量はいまだピークアウトせず、産業革命以降の平均気温は既に1.1℃上昇している。2019年9月の国連気候行動サミットにおいては、パリ協定で合意した『平均気温上昇2℃以下とし1.5℃を努力目標』では気候危機の連鎖を食い止めれないという解析結果をもとに、『1.5℃以下必達』にあらためることが各国に提案された。それを受け先進国、新興国の大半はこれにコミットしたのである。但し、昨年、英国グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)においては、1.5℃以下を実現するための具体的目標である、『2030年までにCO2を現状の45%まで低減、2050年に排出ゼロ』に対し、先進国はこれを意識した目標を提示するも、ワースト1の中国とワースト3のインドは、依然前向きな目標は提示していない。十分な資金と技術援助なしで、厳しい目標提示を要求することが難しいことを、先進国は認識する必要がある。
コロナウイルスの蔓延により経済はリーマンショックを上回るダメージを受け、経済活動が停滞したことで環境が改善し、皮肉にもCO2も前年比で-5.8%と初めて減少に転じた。温暖化とウイルスは無縁ではなく、北極圏の永久凍土が溶ければ、そこに封じ込まれた2万数千種類の未知のウイルスと細菌が地表に出てくる。温暖化に歯止めをかけなければ、自然災害とウイルスの蔓延という脅威が年々拡大し、経済成長どころではなくなるのである。
持続可能な社会の実現に向け、CO2削減は待ったなしの緊急課題であることは自明であり、自動車産業のみならず、エネルギー資本、電力セクターなどすべての産業は環境改善と経済成長を目指した変容が必要になる。世界全体の排出量330億トンの内18%を占める4輪車は、エンジン車などの燃料を石油系からグリーン燃料に転換し、併せて技術の完成度を見極めながら電動車への普及拡大を進めることが必要となる。エネルギーのグリーン化(電力、燃料)戦略なくして、2030年までにCO2を45%削減することは難しい。主要国政府の大半は2030年から2035年までにエンジン車などの、販売を禁止するという目標を表明したが、技術に裏付けされたものでないことは明白である。ここでは、それらの表明に至った背景について解説し、果たして技術の完成度、ユーザーニーズ、雇用、資源なども考慮した時に、エンジン車などを販売禁止としBEVを誘導することが、実質のCO2削減において現実的な解となり得るのかを紐解きたい。併せて、CO2削減目標を達成するための現実的な戦略も提示する。